=派遣メカニックへのチャレンジについて教えてください
ニュルブルクリンク派遣メカニックの選考会には、2020年1月に初めて参加しました。社内で参加希望者を募ったところ、幸運にもその年は私だけでしたので、参加させていただくことになったのです。それまでは、サスペンションの脱着の様子を撮影した動画と、決意表明の動画をSUBARUに提出して審査を受けるというビデオ選考でしたが、2020年から実技試験が導入されました。試験官の前で実際に作業を行うという形式で、SKC(スバル研究実験センター)で実施されました。試験当日まで何をするのか分からないため、非常に緊張しましたよ。
=どんな内容だったのですか
ニュルブルクリンクを実際に走行したWRXのタイヤを1本交換し、指定された空気圧に調整するというものでした。5分という制限時間がありましたが、作業自体は5分もかからないだろうと安易に考え、ただ交換の作業をすればよいと思っていました。右前のタイヤ交換を担当したのですが、作業を終えようとした時、左前のタイヤ交換を担当していた別の参加者が「ホイール損傷なし!〇〇よし!」と声を出して点検していることに気づいたのです。わー!そういうことかー!と思って、慌てて自分も点検しました。その場でなんとか取り繕ったのですが、結局、時間内に作業を終えることができず、不合格という結果に終わってしまいました。この時の試験は、単に作業の速さを競うのではなく、決められた時間の中で、いかに正確かつ確実な作業ができるかを評価するものだったのです。私は時間を意識するあまり、確認作業を怠ってしまったのでした。
=前回は悔しい思いをされて、今回はいかがでしたか
今回の選考会は、2人1組で作業を行う形式で、一昨年からこの形式になったようです。三島店の河上さんが過去2回選考会に参加されているので、事前に話を聞き、対策を練りました(河上さんは2023年、2024年の選考会に参加)。
2023年はレース車両、2024年は市販車両を使用するという情報があったため、今年は市販車両が出題される可能性が高いと考え、ニュルブルクリンクを走行する車両ということでWRXも候補に入れながら準備を進めていましたが、実際に試験車両として用意されていたのはBRZで、その場にいた全員が少し驚きましたね。
=ちょっと意外でしたね。どう対応されたのでしょう
試験は「BRZのサスペンションを外して取り付ける」というもので、私が担当したのは左前でした。
実は社内選考会が役に立っていたというか…夏の社内選考会では、レヴォーグまたはWRXのサスペンションとブレーキローターを交換するという課題が出題されたため、仕事終わりに練習を重ね、左前の作業を7分30秒で完了させることができるようになっていました。これが本当に役に立ちましたね。本番では、BRZの左前サスペンションの脱着作業を7分以内に行うという課題だったので。
=それは、見事にハマりましたね!
社内選考会のために繰り返し練習していたので、落ち着いて作業に取り組むことができました。時間配分も把握していましたし、確認作業を怠らなければ時間内に終わらせることができるという自信もありました。社内選考会が、本番の良いシミュレーションになったと感じています。ペアになった方が、私の作業を非常に丁寧にサポートしてくださったことも大きいです。
=いろいろなことが重なったのですね。その後面接試験を?
はい。同日に行われました。最初の5分間はディスカッション形式で、「ニュルブルクリンクに挑戦するにあたって、どのような結果が得られれば成功と言えるか」という質問が出題されました。当初私は「ニュルブルクリンクに行きたい」という思いばかりが強く、レースに参加してチームが入賞することや、自身が作業をミスなく終えることばかりを考えていました。ところがこのディスカッションでは、ペアになった方が「ニュルブルクリンクでの経験を各拠点に持ち帰り、周囲を盛り上げること、そして、得られた知識や技術を後輩に継承することができれば成功といえるのでは」と答えました。自分のことばかり考えていた私は、はっとしましたね。会社を代表して派遣されることの意義や、得られた経験を会社全体の成長に繋げるという視点を持つことの大切さに、面接で気づかされました。その後の面談で「相手の意見の中で良いと思った点はありますか」という質問がされたのですが、「自身はニュルブルクリンクに行きたいという思いばかりが強かったのですが、そこで得た経験を研修に活かしたり、後輩の指導に役立てたりするという視点は、非常に参考になりました」と正直に答えました。
=意義のある面接でしたね。その後は?
結果待ちの間は、なんと辰巳監督が登場して、フリートークを聞くことができたのです!非常に感動しました!ドライバーの吉田さんのトークも聞けましたし、少し前までニュルブルクリンクを走行していた実車も展示されていて…選考会に参加しただけでも非常に貴重な経験になりました。もう、ただの一ファンになってましたね(笑)
=そうしながら、結果発表ですね
自分の実技試験が終わった後、部屋の隅で待機しながら他の参加者の作業を見て、正直「もしかしたら合格できるかもしれない」と手応えを実は感じていました(笑)。
結果発表は順番に名前をコールというカタチで、私は2番目に読み上げられました。例年、結果発表は北から南の順に行われると聞いていたのですが、今年は順位順なのかもしれないと思っています!ただ、1番目に名前を呼ばれた方は、参加者のなかでもずば抜けていましたね。移動中も熱心にメモを読んでいらして、ファン目線でキョロキョロしていた自分とは大違い。試験で自分の番を待っている間、非常階段の外で待機なのですが、その方は待機中に前のグループの実技試験の音を聞いて、「3回緩めて、続けて2回緩めたから、あれはサスペンションの脱着だ!」と話していたそうです。STIの方がその様子を覚えていて、あとで教えてくださいました。私ならそこまで頭が回らないと思います
=それはすごいですね。そんな方と一緒に行くというのも、得るものが大きいのではないですか
全国から集まった非常に優秀な整備士の方々と交流し、すでに多くのことを学んでいます。また、一人のスバルファンとして、辰巳監督のお話を聞いたり、実車を見学したりすることができ、大変貴重な経験になりましたね。